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苛立ちはあるが、それほどの悪意はなかったと知ったのは大きかった。この年代の少年が起こしがちなトラブルだと鷹也は感じた。
真澄は鷹也と出会って、出産することに問題はなくなった。
だが、想像以上の人数の少女が、望まない妊娠と中絶を経験しているのだろうと、小さく溜息が出た。
少年が、将来どんな大人となるかは分からない。真澄たちと無関係なら、どうでもいいと思えた。東京から少し離れた県だ。二度と会うこともないだろう。
鷹也が見つめる中、少年は素直に書類にサインをしている。
どうして、話をする前に書類ができているのか気づいてもいない。そして、少年は成人年齢に達していないので、彼のサインだけでは書類としては無効だ。
だが、未成年同士の交際妊娠だ。何もなかったことにしたいのは、少年の保護者も、真澄の両親と同じと考えて問題ないだろう。
書類の無効を主張する可能性はほぼゼロだ。鷹也はようやく安心した。
「これで君は、彼女とその子供とは無関係。この書類を渡せば終わりだ」
明らかにホッとした表情に、鷹也は内心可笑しかったが、言葉は、やはり逆だった。
「君も大変な思いをしたのだから、もう少し食べたらどうだね。
ホッとしたら、おなかが空いたのではないかな」
想定どおりに動いてくれた少年への謝礼代わりだ。
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