第三章 大切な人への誓い

6/49
前へ
/128ページ
次へ
 「理奈はどうだろうか」  「元気よ。もう少ししたら産休だけど、そのまま働きたいって言ってるくらい」  聞いて安心した。  従妹(いとこ)で、弟の妻の理奈は現在妊娠七か月。  初めて会った時、彼女はどこか不安そうで、身体つきも細く弱々しく見えた。だが今は、慎也(しんや)だけでなく両親も、甘やかしているのではと思うほど可愛がるので、かなり健康的に変わった。  特に夫になる慎也は、溺愛というのが相応しい態度で妻に接している。  一目惚れだったと恥ずかしそうに言っていたが、ここまで大切にできる女性と出会えたのだから、良かったと思った。可愛い弟には幸せになってほしい。  結婚後、実家を出るかと思ったが、二人は両親との同居を選んだ。少し意外に感じたのは本心だ。将来的に同居だとしても新婚だ。しばらく二人だけの生活を選んでも不思議ではない。  だが、理奈が同居の継続を望んだと聞いた時、彼女の複雑な心境を思い、鷹也も簡単に言葉が出なかった。  理奈は、実の両親に愛されなかった過去を持っている。今は絶縁しているから、余計に家族の愛情を求めたのだろう。  彼女が、(しげる)と智子を実の両親と同じと思ってくれるなら、鷹也にも喜ばしく感じられた。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1452人が本棚に入れています
本棚に追加