第三章 大切な人への誓い

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 従妹(いとこ)には言っていないが、鷹也は天沢(あまさわ)家の動向を定期的に探っている。理奈に害を加えないとは限らない。用心は当然なのだ。  現状、彼らが理奈に接触しようとする様子はない。  あの小切手は即座に現金化された。無効にされる危険を思ったのだろう。そんなことをするつもりはない。理奈に接触さえしなければ。  その現金は、健一の預金口座に入金されたのは知っている。その後の動きはないので、しばらくそのままだろう。  彼らが住んでいるのは、天沢の実家で今は伯父の所有になっている。改修はあってもすぐに建て替えるほどではない。  理奈にさえ近づかなければ、鷹也から接触するつもりはなかった。彼らと会いたいわけがない。特に、理奈の双子の妹の華奈(かな)とは。  常識の通用しない相手との会話は成立しないので、鷹也も回避したい。そして、彼女は鷹也の生い立ちと現在の地位を知っている。余計に遠ざけたい。  「はい。理奈さんとお話できて良かったです。紗彩(さや)さんとも仲良くしてもらえて嬉しいです」  笑顔の真澄は本当に嬉しそうだ。やはり庇護(ひご)の思いを抱いた鷹也は、タクシーの後部座席で彼女の肩を包んだ。
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