第三章 大切な人への誓い

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 ***  秋が進むにつれて、少しずつ真澄のおなかは膨らんできた。鷹也は自分の子供ではないが、父親になるという実感を(おぼ)えた。幸せを感じた。  結婚するつもりはなかった。  霧山商事に入って間もなく、鷹也は、自分が女性社員たちから注目されていると知った。彼が、社長の異母弟であることは有名だ。  つまり、鷹也は本家に最も近い男性の一人だ。  容貌も一族の血を引くと分かる端正なもの。そして、次の当主の信頼も受けている。余計に騒がれるだろう。しかし、鷹也は無関心だった。  霧山本家に騒動を呼ぶかもしれない行動は取れない。  彼は、生まれたことに感謝しているが、出生を面倒と感じるのも仕方ない。継父と本当に血が繋がっていれば、鷹也の人生は論外に楽だっただろう。  なので、自分の子供を持つなどありえなかった。  それが今は、帰宅すると真澄が出迎えてくれる生活になった。実家にいた時とは違う安らぎを鷹也は感じた。  結婚してから、鷹也は今まで以上に業務の効率を考えるようになった。できるだけ早く帰宅したい。心細いだろう妻に安心してほしい。そんな考えになっていた。
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