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肩を小刻みに震わせ笑いを堪える
十月「ブッ!!んふふふふ、…ゴメン」
想定を遥かに下回る低レベルな理由に思わず十月は麦茶を吹き出し雅庵の顔に吹っ掛ける
雅庵「だよなー笑うよな……でも、やる前は本当頭来たんだよ?」
後ろを振り向きシンプルな色合いの引き出しから無地のタオルを取り出し顔拭いた後タオルを裏返しフローリングを拭く
十月「分かるけど単なる一時の感情でしょ?手伝うよ」
手伝おうかと十月が手を差し伸べるがやんわりと雅庵に断られる
雅庵「ありがと、でも大丈夫……どうだろ、連鎖的かも知れないぞ?」
十月「って言うと?」
雅庵「未だにそのグループに入ってるからね、またアタシが何か言って反応がなかったり無視されたら死ぬかもしんない」
タオルを洗面所へ持っていき水で濯ぎながらタオルを絞る
十月「そんなグループ抜ければ良いじゃん」
雅庵「出来たら苦労しないって」
十月「どうして?」
そう尋ねると雅庵は水道の蛇口を閉めゆっくりと語りだす
雅庵「依存してるから…もし、今回スルーされても次がウケたら?自分が一瞬だけそのグループの中心に居られるんだよ、それが快感になって辞められなくなる…スルーされたのに傷付いたのにそんな事すら快感は忘れさせてくれる…例えまたスルーされても快感欲しさに…中心に立つために何度も繰り返すんだ」
十月「…DVみたいだね、暴力とか振るわれても少しでも優しさを見たら忘れちゃうってやつ」
雅庵「…一緒かもね、知らないけど」
三度席に戻り麦茶を口にする
十月「まぁ、とにかくスルーに耐えきれずに雅庵は自殺したんだね」
雅庵「そういう事」
十月「おっ、それってさある意味依存から抜け出せたんじゃん?」
雅庵「あー…そうかもしんない、最低の脱出方法だけどね」
十月「でも、まだグループ入ってんなら抜け出せてないっか」
雅庵「……返す言葉もない…でもさ、アタシは死なないからこうやって冷静なれるけどこんな下らない理由で死ぬ人も中にはいるからね、依存症だって分かってるのに死ぬ人もいるから余計タチが悪い……昼は?」
十月「それなー……お昼まだだよ」
雅庵「おけ、何かあったかな…」
再び台所へ赴き冷蔵庫を開け腕を庫内に突っ込み食品を取り出す
十月「……」
冷蔵庫を漁る彼女を見つめていく最中、彼女の左腕に青痣が出来ている事に気がつく
雅庵「あんまジロジロ見るなよ…背を向けてても分かるぞ」
十月「げっ、さすが自意識過剰!!」
雅庵「うっさい、で何?」
十月「いやさ、死なないのに何でアザがあるのかなって」
雅庵「何か自分で傷つけた傷は治るんだけど他人に傷つけられた場合は治りにくいらしい」
袋麺と野菜を取り出す
十月「じゃあその痣は誰に殴られたの!?」
雅庵「あー、これはこの間電車で見知らぬお婆ちゃんが躓きそうだったから咄嗟に腕を突き出して転倒を防ごうと思ったら以外とお婆ちゃんの握力が強くてね、その結果うっ血した」
麺を熱湯の入った鍋に放り込みキュウリを切る
十月「…銀髪不良根暗メンヘラコミュ症Jkにそんな優しさが…」
わざとらしい嗚咽を吐き嘘泣きをする
雅庵「色々と余計だ、それにこれは銀髪じゃなくて白髪だ」
十月「えっ!?そうなの?」
雅庵「あぁ、染めんの面倒だし夏は黒髪だと暑いし」
十月「苦労してるんだね…まあ、自殺するくらいだもんね…」
雅庵「…やっぱ一人前で良かったか…」
十月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…私もご飯食べますぅ~」
台所にいる雅庵に向けて十月が土下座をする
雅庵「……」
鍋から皿へと麺を移し盛り付け具を乗せ、何も言わず十月の元へ運ぶ
十月「!?…雅庵ぃ~…なんだかんだで優しいよね…」
雅庵「…そうでもない…けど、十月みたいに正直に言ってくれる奴の方が気が楽かもな…変に気を遣うからお互いに不信感が生まれるんだと思う」
続けて自分の分の冷やし中華を机に置く
十月「いただきまーす!………何か雅庵悟ってるね…年の甲ならぬ自殺の甲ってヤツ?」
雅庵「いただきます……かもな」
割り箸の片方を口で咥えもう半分を割る
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