一、新寮長

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 少しの間、沈黙が流れた。  男子三人、女子五人。皆、小学校の通知表の成績はいい。だけど、他の決定打がない。  スポーツの大会だとか、習い事のコンクールだとか、先生の特徴的なコメントだとかがなくて、誰がAランク確実かなんて全然わからない。   「確か、謙太は1年の時から部屋変わらないよな?」  健司が静かに言った。 「はい、ずっと同じ部屋です」 「ちょうど帰ってきてることだし、謙太に四階に移ってもらうのはどうだ? 急で悪いけど、部屋は広くなるだろ?」 「確かに!」 「それいいですね!」  思わぬ名案に、咲希と慧の声も弾む。だけど清次郎が待ったをかけた。 「別にそこまでしなくていいだろ! Aランクになりそうな1年が入ればいい!」 「じゃあ、どの子がいいと思うの?」 「ほら、この赤沢とか」 「なれなかったらどうするの?」  押し黙る清次郎に、亜実は一気に畳み掛ける。 「ランクが決まる前にこんなに勧誘して……もしCランク以下になったらどうするつもりなの?」 「ちゃんと成績を見て勧誘してる。いい生徒は早めに声をかけないと、他にとられるだろ」 「ランクは勉強だけで決まるんじゃないでしょう? 小学校によって、通知表のつけ方も違うし」 「わかってるよ。それでも大丈夫だと思って勧誘してるんだ。口を挟まないでくれ!」 「ちょっと!」  清次郎はそう言うと、荒々しく席を立った。プロフィールの用紙をまとめ、パソコンを持つと、そのまま食堂を出て行ってしまう。 「ごめんなさいね」  清次郎の姿が消えると、亜実は申し訳なさそうに言った。 「そんな! 亜実先輩が謝る事じゃ!」 「私が副寮長だし、同じ学年で長い付き合いだもの。昔はこんな感じじゃなかったのに、ここ数年、意固地になってるの」 「確かに1、2年の時はよく話もしてくれて、俺もすごく世話になったんだよな」  健司も頷く。 「これ以上暴走しないといいけど……」  その懸念は、翌日現実のものとなった。
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