一、新寮長

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 その時だ。バルコニーの扉が、ゆっくりと開いた。  短く切り揃えられた茶色の髪に、縁のない眼鏡。そして、190cmを越える身長。やって来たのは新7年生のAランクで、先端技術科の新しい寮長、家長清次郎だ。 「引っ越し大体終わりました」 「そっか、お疲れ。こっち来て座れよ。今、咲希がミルクティー淹れてくれたから」  孝則が手招きすると、清次郎は咲希達の向かいのソファーに座った。 「いや、すごいですね。部屋も驚きですけど、こんな場所があるなんて知りませんでした」 「ここは代々五階に住んでる人と、寮長が認めた人だけが入れるんだ。基本はお茶してるだけだけど、寮の話し合いをしたり……咲希達は選択科目の時間もここだよな?」 「はい」  頷くと、清次郎と目が合う。 「ちなみに何でここに犬が?」  咲希の代わりに答えたのは健司だ。 「咲希が飼ってるジスランですよ。清次郎先輩、犬ダメとかじゃないですよね?」 「アレルギーとかはないけど、話し合いの場に犬がいてもいいのか?」 「柚子先輩と蓮先輩も可愛がってたし、寧ろ連れて来いって言われてたんですよ」 「こいつ、話し合いの間は大人しくしてるし、慣れてる人にしか飛びかからないんで安心して下さい」  慧もそう言って、庇ってくれる。 「ダメでしたら、部屋に連れて帰りましょうか?」  咲希が尋ねると、清次郎は慌てたように首を横に振った。 「いや、今まで良かったならいいんだ。ちょっと気になってな」
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