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「あ、えっと……」
隠すつもりはなかったけれど、まさか慧の方から言うなんて。思ってもなかった事態に、うまく言葉が出てこない。
「いつからだ?」
「何時間か前……二人で、トンネル歩いてる時」
消え入るような声で答えると、康介はまた小さく笑った。
「慧も律儀だな」
「うん……」
「お前も慧も中途半端な気持ちで付き合ったりしないだろ」
「うん」
「良かったな」
「……うん」
どこか嬉しそうな康介に、喜んでもらえた嬉しさ以上の気恥ずかしさが押し寄せる。鏡なんて見なくても、顔が真っ赤な事は想像できた。
でも、康介は落ち着くまで待ってなんてくれない。
「由羅にも報告しろよ? 心配してるから」
また衝撃的な事を言ってのけた。
「由羅⁉︎ 由羅に会えるの?」
「今こっち向かってる。夜には着くだろ」
「連絡とってるの……?」
学園にいた時は、見かけてもお互いに声もかけなかったのに。恐る恐る尋ねれば、「ああ」と短い返事が返ってきた。
「詳しくは由羅に聞け。だけどな、この家に来て飯も食うし泊まっていく事もある。安心しろ」
康介の表情は柔らかい。それだけで、学園にいた頃とは全然違う関係なのが伝わってくる。自然と顔が綻んでくる。
「どうせ時間はある」
「どういう……?」
咲希の問いかけに康介が答える事はなかった。代わりにリモコンを手に取り、ベッドの向こうに置かれたテレビを点ける。
映ったのは。
【どうか私達の大事な後輩を、家族を返してください!】
「姫っ⁉︎」
すごい数のフラッシュライトを浴びながら涙する姫の姿だった。
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