十、運命の日

33/42
前へ
/300ページ
次へ
 ほら。そう言って渡された携帯を慧と共に覗き込む。 【美人すぎる】 【やばくない⁉︎ 犯罪心理学の研究のためとかって言われてたけど、実は裏金の隠し場所とか!】 【子供を再教育して使用人て、人身売買と何が違うの⁉︎】 【金塊やばっ! 内閣総辞職案件だろ!】 【ていうかこの子人類? 天使? 何者?】 【この何十億って金、困ってる人のために充てられたよな】 【学園施設にエステとか牧場とか水族館てあり得なくないですか?】 【皆さん、この動画どんどん拡散してください!】 【とにかく連れて行かれたっていう子の安全第一! 署名活動とかするべき? にしてもこの子も後ろの子達も綺麗すぎ! こんな子達泣かせるなんて!】 【そんな異様な空間に閉じ込められて、親と面会どころか手紙も電話も無理って……逃げてきた生徒達もよく頑張ったよ】 【薄幸の美人!】  そのSNSにはたくさんのコメントが並び、数も秒ごとに増えていく。 「姫すごすぎない?」  思わず呟くと慧も頷いた。 「ああ、こんなに広まったらもう揉み消したりはできないだろ。にしても薄幸って……」 「姫とは正反対の言葉だよね」  薄幸どころか寧ろ幸せは自分で勝ち取っていくタイプだ。すると、今まで聞き役に徹していた康介がポツリと零した。 「あいつのいざという時の猫被りは昔から一級品だ」  その言葉に、またリビングが笑いに包まれる。 「やっぱりすごいよな!」 「怒ってる時とか妙に迫力あるもんな!」 「微笑んでるのに先生にも先輩にも負けないし!」 「流石姫!」  咲希も笑いながら、次のお皿へと手を伸ばした。  たくさんあった料理も粗方片付いてくると、会話にも花が咲く。 「そういえば咲希と慧はどうやって連絡とってたの?」  思い出したように尋ねたのは海里だ。そこに隣のテーブルから謙太も乗っかった。 「それ僕らも気になってたんだ! 教室とかで派手に喧嘩してたのに、どうやって意思疎通してたの⁉︎」    謙太の問いかけに慧と一度顔を見合わせる。 「昨年蓮先輩にハッキング対策してもらった端末あるじゃないですか。あれと……」 「あのタブレットか!」 「指だよね?」 「ああ」 「指⁉︎」 「何ですかそれ!」  答えると、謙太と京子から驚きの声があがった。その声にリビング中の注目が集まった。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

545人が本棚に入れています
本棚に追加