十、運命の日

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「家にも電話一本ないって。卒業以来誰にも姿を見せず、本当にどこにいるんだか」  由羅はそう言って息を吐いた。  そこにインターホンの音が鳴り響く。 「咲希ー! お客さーん!」 「はーい!」  柚子の声に出てみれば、玄関には涙を浮かべた女性達。 「高宮先輩っ!」 「結坂さん……約束、守ってくれてありがとう」  高宮や立川達五人は、泣いているのに笑ってる。そして同時に、一つの足音がすごい勢いで階段を駆け下りてきた。 「奈津紀! 諒子! 未知子! 葉子! 恵理!」 「春奈っ!」  六人はそのまま縺れ合うように抱き合った。 「春奈っ! 春奈だあっ!」 「やっと触れる!」 「もう絶対あんな所に返さないからっ! 絶対連れて行かせないからっ!」 「みんなぁっ……会いたかった!」    玄関先で繰り広げられる再会劇に、「とりあえずあがってください」なんて口を挟むのも憚られて、見守る事しかできない。会う度に言い争い、時には足を踏みあった柚子ですら何も言わず。 「テレビを見たって姫の会社宛てに電話があって、ここの住所を教えたの! 事情は聞いてたけど、まさか咲希がここまで高宮達と仲良くなってるなんてねー!」  少しくらい相談してくれても良かったのに。代わりに咲希に向かって口を尖らせた。  そして。 【今入りました速報です!】  学園から脱出して一週間。 【政府はネデナ学園について以下の事を発表しました】 【ただいま始まりました緊急記者会見の様子をご覧ください!】  事態は決着した。
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