ニ、新たな始まり

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 でも、教えてくれる先輩達はもういない。もっぱら、今までの復習や残してくれたソフトだ。 「今日は雄貴先輩のソフトでいいか?」 「うん。まだやってないのは……このゲーム作りだね」 「一分くらいで遊べるゲームを考えてプログラミングするやつだな」  会話しながらパソコンを動かし、ソフトを立ち上げる。  暫くはキーを叩く音だけが響いた。  やがて、慧が口を開いた。 「なあ」 「うん?」 「ここ、好きか?」 「え?」  思わぬ言葉に、手が止まる。 「この寮、好きか?」  慧はもう一度尋ねた。  何を聞きたいのかわからない。でも、これだけは言える。 「好きだよ」  咲希が言うと、慧もパソコンを操作する手を止めた。 「本当の兄弟みたいに仲が良くて、しょっちゅうふざけて馬鹿騒ぎして……。先輩達は寮の皆を守るために頑張ってくれるし、後輩達は慕ってくれる。ここに来て、今まで頑張って良かったと思えたし、これからも頑張ろうと思えたもん。こんなにいい寮、他にないと思う」  すると、慧は呟くように言った。 「そう、だな……そうだよな」  そして、続ける。 「何で生徒会の事、聞かないんだ?」 「聞かれたくないんでしょ? 流石にわかるよ」 「そうか……。なあ、結坂」 「ん?」 「ちゃんと守ろうな」  何を、とは言わない。だけど、思いは伝わってくる。 「うん」  静かに頷くと、慧は満足げに口角を上げた。 「よし、続けるか」 「これ。一日じゃ終わらないよね?」 「なら、来週までの課題にするか。つまらなかった方が罰ゲームな」 「じゃあお昼おごりで」 「了解!」  それと同時に、視線をパソコンへと戻す。再び、キーボードを叩く音が部屋を支配した。
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