三、夏の綻び

2/47
544人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
 賑やかな声は談話室からだ。  入ると、そこにはほとんどの寮生が揃ってる。 「どうしたの?」  入り口近くにいた京子に尋ねると、京子は興奮した様子で答えた。 「咲希先輩! 清次郎先輩が夏休み中に皆でキャンプするって! ホテルも、流し素麺ができるように予約済みです!」 「バーベキューとスイカ割りもあるんですよ!」  佳那も嬉しそうに続く。  奥を見ると、清次郎が新入生達に囲まれていた。 「お、5年組も帰ってきたな」  清次郎はそう言って笑う。 「今年のホテルはサンシャインホテルだ。部屋割りは寮とほとんど変わらないから見ておいてくれ。今度の日曜は寮に工事が入るらしい。皆でキャンプコテージに泊まるから、それまでにはドリームランドに移動しておいてくれよ」    その言葉に、再び歓声があがった。  咲希も、キャンプにバーベキューにスイカ割りと流し素麺なんて、楽しそうだと思う。  サンシャインホテルも泊まった事がないし、キャンプコテージは今年できたばかりの筈。楽しい事が好きな先端技術科にはもってこいだ。  だけど、清次郎の近くに立つ亜実の表情は冴えない。  やがて、亜実は痺れを切らしたかのように手を大きく叩いた。騒がしかった談話室が、一瞬で静まる。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!