一、新寮長

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 八十人のプロフィールを読んで、事前に誘いたい生徒を選び、絶対に来てほしい生徒は説明会の直後に声をかける。そして新学期までに残りの生徒も勧誘して、説明と入寮手続きまで済ませなければならない。  これを一人でやるなんて、絶対無理だ。  そう思うけれど、寮長が言う以上、帰るわけにもいかない。  四月八日。  咲希達はまだドリームランドにいた。 「大丈夫かなー?」  咲希は足湯に浸かりながら、呟いた。 「結局亜実先輩にも頼んでないんでしょ?」  謙太が尋ねる。 「うん。朝、健司先輩と出ていくの見たもん」 「一人で選ぶんじゃ、色々偏りそうだけどな」  博は冷たいお茶を飲みながら、ぼやくように言った。  ジャイプルに新しく作られた、この足湯。二十畳はあろうかという大きな部屋で、足湯に浸かりながら、音楽と数十種類のドリンクを楽しめる。  今日はSランク特権で貸し切りだ。壁は防音だから、話を聞かれる心配はない。 「班も清次郎先輩一人で決めるって言うし、あの人、何考えてるのかよくわからないよな」  慧は言いながら、大きく伸びをした。 「あんまり話した事ないもんね」 「いつもすぐ部屋に戻るしな」  謙太と博も同意するものだから、流石に苦笑してしまう。でも。 「努力家で勉強ができるのは知ってるけどね。ずっと五位以内だよ?」 「俺達はずっと三位以内だ」  慧と博に声を揃えて返されて、それ以上何も言えなかった。
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