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その時、音の籠る室内に着信音が鳴り響いた。亜実先輩だ。
「はい」
迷う事なく出ると、亜実らしからぬ慌てたような声が返ってきた。
〈咲希、慧も一緒?〉
「はい、一緒にいますけど……」
〈良かった! 今すぐ帰ってきてほしいの。できたら博と謙太も!〉
「え?」
思わず変な声が出た。
ーー亜実先輩があんなに慌てるなんて。
嫌な予感しかしない。
迎えの車に乗って、二週間ぶりの寮へ急ぐ。そして玄関に入ると、そこには健司と亜実の姿があった。
「良かった、帰ってきてくれて!」
「どうしたんですか?」
「私達、心配になっちゃって、さっき帰ってきたのよ。そしたら……」
「談話室にもう新入生がいるんだ、八人もな」
「八人!?」
思わず聞き返すと、健司はうんざりしたように頷いた。
「しかもな、全員入寮届受理済みなんだ」
「え? ランクが発表されるまでは受け取らないんじゃ?」
博が聞く。
「清次郎先輩が受け取っちゃったらしいんだよ」
「でも三階の空き部屋、七部屋しかないですよ? どうするんですか?」
謙太も尋ねた。
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