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スマホアプリに通知が届いている。三日ぶりに『私を見つけて抱きしめて』は更新された。
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何でも話せるわけじゃない。君にも秘密があるはず。私たちはすべてを見せ合うわけじゃない。でも大丈夫。信じることとは別だから。
天気予報では午後から雨だと言っていた。だけど傘はいらない。私の憂鬱は雨に流される。
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遥が執筆しているという確証はまだない。今日の更新分についても、アプリ内の小説を読み慣れない悠真にすればとりとめのないような内容で、特別なことが書かれているとは思えなかった。
「真奈ちゃん、す、すげえ!」
穂積の裏返った声がオフィスに響く。キッチンでコーヒーを落としていた悠真は素早くアプリを閉じデスクへと目をやった。熱心に建築模型を組み立てる真奈の周りで穂積がウロウロしている。
(綾瀬さんのところの仕事か)
建築模型とは依頼主に説明を行う際に使用する、建築物のミニチュアである。スチレンボード(発泡スチロールの板)を図面に合わせてカットし組み立てたものだ。
模型は平面図より完成した家をイメージしやすい。建築家の意見や依頼主の要望も明確になる。建築模型はプレゼンにおいて重要な道具のひとつだ。
「久我、見てみろよ。真奈ちゃんはじめてなのに一日で作っちゃったよ」
穂積に呼ばれ悠真がマグカップを手に向かうと、やっぱり恥ずかしそうに俯く真奈の姿があった。二階建て住宅の百分の一サイズ色模型は確かにほぼ完成状態だ。細部まで丁寧に作られていることに悠真も感心した。もともと手先が器用なのだろう。
(俺なんかよりずっと上手い)
悠真が多くの模型を作るようになったのは就職してからだ。学生時代、スタディ(検討方法)は模型よりドローイング(手描き)やCAD(コンピュータで図面を描く)のほうが好きだった。
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