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身体を屈め、悠真は模型に顔を近づける。
「庭や外構にも指示が?」
「いや、図面は無し。真奈ちゃんのデザインだよ」
穂積のほうが得意げになる。綾瀬のデザインであるかどうかくらいひと目で分かる。悠真はやはりそうかと思う。
「上手いな」
レンガのアプローチや植栽は間違いなく住宅の魅力を引き立てている。模型用のパーツを使ったとはいえ、はじめてでこれだけの物を作れるとはかなりセンスがいい。それに集中力だっているだろう。
真奈は自分が思うよりずっとこの仕事が向いているのかもしれない。悠真はコーヒーを飲みながら気を良くする。穂積と似たようなものだ。
そこへ、来客の予定などなかったはずが思いがけずインターフォンが鳴る。
「俺が出るよ」
悠真はモニターを確認しに向かった。
「こちらに久我さんいらっしゃいますか?」
(誰だ?)
長い前髪で目元はおおわれてしまっている。しかし、モニターに映る上半身は特徴的だった。どこかで出会っていたとしたら、記憶に残っているはずだ。
(知らない男だ)
「私ですが、どちら様でしょう?」
「宮本って言います」
「どちらの宮本様でしょうか?」
「探偵です。小山遥さんのことでお話を伺いたいんですが」
背後にいる穂積と真奈の動きが止まるのを感じた。二人にも音声が届いたのだろう。
「はい。お待ち下さい」
悠真は解除ボタンを押した。
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