序章

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序章

京浜急行三崎口駅。京浜急行駅の下り最終駅で三崎には港があり、マグロで有名な場所である。始発電車を待つ乗客の数が12~3人ほどシャッター前にいる。時刻は4時40分を過ぎたところだ。少しずつ周囲は明るくなってきている。天候は快晴、運行に全く問題なし。シャッターがゆっくり上部に動き、乗客が駅構内へ入って行く。発車時刻は5時5分。既にホームには8両編成始発特急が到着。乗客が眠そうに電車内に乗車していく。何事もなく、今日も始まるだろう。乗客が車内に乗車し、5秒も経たぬ間にけたたましい悲鳴が早朝、空気が澄んで音が響く環境で起こった。全車輌、全てに悲鳴が轟き、車内にいた乗客が4両目の車輌に駆け付けた。悲鳴を上げた女性は、車内に入った位置で固まり、その場にへたりこんでいる。それを見た者は、ある者は目を背け、ある者は気を失い、ある者はその場に嘔吐し、ある者は茫然自失した。そこには、骨を砕かれた腕を後ろ手に右腕を上部から下に、左腕を下部から上部へ接点で強引に結ばれ、膝から下部の骨を折られ中座した男の姿があり、眼球はくりぬかれ、裂かれた口の中に入っている。有るべきモノを無くした暗い2つの双貌からは、血が涙のように頬へ滴り落ちていた。およそ、人の力では専用の工具でも使用しないことには容易ではない状況である。着衣の黒いTシャツには冗談のように黄色くpeaceの文字。それが捲られ腹部が剥き出しになっており、そこは異様に膨れていた。何か人工的なものが腹部に入っており、それを入れるため、胸部中心から下方へ一気に裂かれている。内臓器は外に溢れ、彼を中心とし、床に血溜まりができていた。驚愕すべきは、この時点でまだこの男が僅かに生きていたということだ。乗客の一人、医療センターに勤務する里田光一(34)の証言によれば、口顎部が何か言いたげに上下していたと言う。現場は騒然となり、京浜急行登り方面は三崎口~金沢文庫間を人身事故のためと言うことで3時間運行停止となった。あまりに凄惨な事件でマスコミ各社の知ることとなり、ニュースで取り上げられることになる。しかし、これはこれから起こる容疑者不明連続殺人事件の始まりに過ぎなかった。
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