Good night.

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Good night.

 廊下の角の向こうから、男が一人駆けこんできた。武装したその男の名は、クロードといった。  彼は私たちの数の多さに驚いてか、一度だけ足を止める。 「……っ」  だが、すぐに銃口を上げてアサルトライフルを連射した。腕を伸ばして迫る私たちの間を突っ切りながら、正確に弾を命中させていく。仲間は、次々と倒れていった。  クロードは、圧倒的だった。  横からアサルトライフルのハンドガードの部分を捕まえられても、銃口で円を描くようにぐるりと回して弾き飛ばす。すぐさま、その先端に装着されたバヨネッタが、一人の首に突き刺さった。  後ろから掴みかかれば、ストックの部分でぶん殴られる。這いつくばりながらもクロードの足を掴んだ一人の頭を撃ち抜いた後で、バヨネッタが横なぎに一閃。足を切り裂かれて床に転がった背後の一人は、顔面にほぼ接射で弾をくらう。  正面の一人は、バヨネッタでまっすぐ腹を刺された。刺す勢いで押し込み、後ろの数人を巻き込んでよろめかせる。その隙に、弾倉が交換された。バヨネッタを引き抜かれ、倒れた一人の頭が踏みつぶされる。ほぼ同時に、よろめいていた一人の頭に派手な風穴が空いた。  どの方向から襲いかかっても、クロードには関係がなかった。仲間の数は、確実に減らされていく。  だがそこで、フロアにあるエレベーターが到着した。開いたドアからは、わらわらと仲間たちが下りてくる。 「おい、またかよ……!」  吐き捨てるようにつぶやいたクロードに、仲間たちは次々と向かっていった。  ——そして、『私』もそこにいた。  最後に、そのエレベーターを下りたのは私だった。仲間たちに続いて、私もふらりと廊下に出る。体に力がうまく入らなくて、ゆらゆらと揺れる。まっすぐ歩けていなかった。  鳴りやまない銃声に向かって、廊下を進んでいく。ごみのように転がるおびただしい数の死体の間を抜けて、仲間たちとともに、いくつもの血だまりを踏み越えていく。  私のゆがんだ視界にも、ようやく射撃の火花が見えてきた。 「あ……あぁ……」  遠くに愛しいクロードの姿を見つけて、私は腕を伸ばした。仲間たちがどんどん先へ行くなか、気ばかりが焦る。両腕で宙をかくようにして、前へと進んだ。  ——早く、行かなきゃ。  私の前に、まだ二人いた。向かって左手の一人は、アサルトライフルの側面で顔を殴り飛ばされる。右の一人は、銃弾で脳しょうを飛び散らせたところだった。それらは、そばの壁にびちゃりとへばりつく。  目の前が開けた。やっとやっと、私の番。  ——クロード。  私は、両手を大きく広げながら、彼の前に飛び出した。私と対峙したクロードは、目を大きく見開いた。  変わり果てた姿でも、私だとわかってくれたのかな。もしそうだったら、嬉しいな。 「……くそったれ」  力なくつぶやいたクロードは、一歩引いて胸を丸めるように私の手を避けきる。彼に、泣き出しそうなくらいの悲しい顔をさせたのが、ただ申し訳なかった。  クロードの表情がすっと消えて、腰に装備されていたハンドガンが掴み上げられる。その銃口が、まっすぐに私に向けられた。 「おやすみ」  ——おやすみなさい、クロード。  視界が真っ赤に染まる。そして、真っ暗になった。
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