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プロローグ
おはよう、そして会えないときのためにこんにちは、こんばんは、おやすみなさい。
なんて、かの有名なセリフを思い浮かべてみたりする。だけどあたしは今閉じ込められていて、まともに目を醒ますことさえままならないのが今の状況なのだ。
あたしはアイ。なんだかジョークのような自己紹介。でもこれがあたしに与えられた名前だから、文句を言ったり、ばかにするように笑ったりしないでね。あたしのだいじものなの。
さて、どこから話そうかな。臆病なあの人の話? それとも、なんであたしが閉じ込められているかって話? ここはどこかって話?
どこから話せばいいのか、あたしもわかんない。なんせこの話は、あたしという存在が終わっているところから始まるの。
始まる前に終わっているお話。
悲しむ前から落ちる涙のように。
考えるより前から発した言葉のように。
死んでから現れる、幽霊のように。
終わってから、誰も知らないところで始まっていくの。
そんな救えないこの物語は、偽物のあたしが、大切なあなたを救いたいっていうお話。
だからよく聞いてほしいの。この、今から始まる、嘘の、愛の、話を。
あなたが救われるのなら、あたしは地獄に落ちたってかまわないから。
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