月の道

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 満月の夜だった。  別に海へ行こうと思っていたわけじゃないけど。  歩き回っていたら海に辿りついた。  子どもの頃、よく家族で海水浴に来たっけ。そういえば、あの頃は無邪気でいられた。楽しかったことを思い出すとまた目の周りが熱くなる。  夜の海は別世界のよう。  水面に映る月明りは明るく静かで、悲しい私を慰めもしない。 「何してるの?」  不意に声をかけられ、振り向いても誰も居ない。ふと見るとすぐ隣にしゃがみ込んでいる女の子がいた。気付かなかった。 「……何もしてないよ」 「……ふうん」  そういえば何をしていたんだっけ。  家出してきたんだ。……っていうか追い出されたんだ。
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