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 すぐに驚きの表情を笑顔に崩し、麻里の頭をポンポンと優しく撫でる。  緑の目は憂いを滲ませ紅く色づいていた。 「……優しいんだね。麻里ちゃん、何年生?」 「中一。緑ちゃんは?」 「私、高2だよ」 「いいな。大人。もう働けるよね」 「麻里ちゃん、働きたいの?」 「うん。自分のお金で暮らしたい」 「偉いね。そっか。私、もう働けるのか」 「そうだよ! 緑ちゃんはもう自分で暮らせるんだよ!」  麻里は思わず大きな声を出した。 「中学卒業したら働けるんだよ。私、御免なさいって言ってご飯食べるの辛い。服も、いつもお下がりだけど、もらってきてくれたお母さんにお礼言えって。嘘つきで役立たずなのに布団に入って寝させてもらえるのも、本当だったらありえないことだからありがたく思えっていうけど……。学校の子、みんな普通に暮らしてるよ? そんなに私だけが悪いのかな? おかしいよね? 私、嘘なんかつかないよ? 頭がおかしくなりそうなの! だから自分で働いて暮したい。仕事なんて何だっていいよ。怪しい仕事でもエロい仕事でも何でもいいからとにかく働きたいの」 「……麻里ちゃん……麻里ちゃんは悪くないよ。……偉い……偉いね」 「そうだよね? 悪くないよね! だから私、いっぱい働いてお金貯めて私が(たける)を……弟を育てるの。だから緑ちゃんも一緒に(はたら)こ? 私たち、自分で暮らしていこうよ」 「……麻里ちゃん……」  緑は麻里をぎゅっと抱きしめ「偉い偉い!」と頭を撫でながら、グスグスと鼻をすする。  緑は笑顔も作れないほど泣き顔になり、麻里のほうが緑の頭を撫でた。 「緑ちゃんの色々あるって……。それって辛いこと……だよね?」 「ふふ。いいのよ。私の事は」  緑は泣いた顔のまま笑って言った。
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