《2》ねぇ千葉、俺はね。

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《2》ねぇ千葉、俺はね。

 年度末、社内は少しざわついている。  そもそもが従業員数三十人程度の小さな地方支社だ。とはいっても、部署内のざわつきの理由は、おそらく忙しさのせいだけではない。 「椎名主任」  不意に声をかけられ、そちらに向き直る。  自席に着いたまま首だけを動かして見上げた先には、ひどく神妙な顔をした千葉が立っていた。  彼のデスクはまだまだ煩雑だ。書類やらフラットファイルやらでごった返しているように見える。  急な話だったから、仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが。 「どうしたの、千葉くん?」 「いえ。……その、今お時間よろしいですか」 「……うん。いいよ」  用件は察しがついた。  普段通りに笑いかけて返事をしたものの、千葉が思い詰めた表情を崩すことはなかった。
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