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――なんで俺がっ!!――――
誰かの言い争う声で目が覚めた。パッと目を開けた先は知らない部屋だった。
「ここ…どこ?」
寝かされていたベッドからのそりと起き上がるとあたりを見渡した。
殺風景な部屋には今使っていたベッドと勉強机と思われる机が一台あるだけだった。勉強机と言っても机上には何もない。窓際に近寄り外を確認しようとした時、部屋のドアが開いた。
――ガチャ
音の鳴った方を振り向くと見知らぬ男が怖い顔をして立っていた。
「…はぁーー」
頭をガシガシと掻き、こちらに近づいてくる。
「え…なに…」
何も言わずゆっくりと向かってくる彼がとても恐ろしかった。逃げるように後ろへとじりじり下がる。トンと背中に壁が当たりそれ以上動けなくなった時、不意に手が伸びてきた。
その瞬間、誰かと重なった。
『なんで私の言うことが聞けないの…!』
怒り狂った母親の姿だった。
髪の毛は引っ張られ、身体ごと引きずられる。
『ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさいっ…』
その光景が鮮明に思い出された。身体が震え始め、目の前が真っ白になり、呼吸が浅くなる。
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