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ピーンポーン ピーンポーン
間延びしたようなチャイムが聞こえ、清良は目を覚ました。
チャイムはしつこく鳴っている。
しかたなく、フラフラした足取りでインターホンの「応答」を押しに行く。
「はい」
かすれた声で出ると、妙に丁寧な声が聞こえてきた。
「館花さんですか。郵便局ですが、書留です」
清良は仕方なく、少し待つように伝えた。
ノロノロとベッドに戻り、服を身に付けた。ドアの向こうでは何人もの人間が、焦って殺気立っているのを感じる。
郵便局員なんかじゃない。清良には分かっていた。
優の姿はもうない。
満月のせいで、明るみに出てしまったから。
ドアを開けると、やはり殺気立った警察官が何人も、ドアの前で待機していた。今にも部屋に飛び込みそうだ。
先頭にいた女性の警察官が口を開こうとしたが、清良の首を見てはっとした。
「あなたっ、大丈夫ですか?」
その声が合図のように、他の警察官がどっと部屋に突入した。
入り口に残された清良は、女性警察官に言った。
「あの人はもういませんよ。あの人は……誰だったんですか?」
「海藤優作。連続女性殺害犯です。女性の家に入り込んだ挙句、殺してしまう……あなたが無事でよかった」
「みんな……殺されてしまったの?」
「今捜査中だけど……今のところ三人の女性が、亡くなっているの」
「じゃあ……」
こらえきれなくなって、清良の目からは涙がこぼれた。
「どうして、わたしは殺さなかったの……」
あの時の優の目。あんな哀しみに打ちひしがれた目を、清良は見たことがなかった。たとえわたしが死んでも、あんなに悲しんでくれる人はいない。
今夜は十六夜、その次が立待月、居待月、寝待月、更待月。月は待たれ、満月は望まれる。
誰も壊してはくれない。
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