月明りの下、無邪気に願えば…

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 小さな足が歩幅も小さく床をパタパタと踏んで、リビング続きのダイニングで晩酌を楽しむパパとママのところに絵を持っていくと、途端に二人の顔が蕩ける笑顔になって美月を見つめる。僕はこの瞬間が大好きだ。  だって、僕のひまわり組には、いつもお父さんやお母さんに怒られて、お腹にあざがある子がいるんだもの。  内緒だよって見せてくれたけれど、むらさきや黄色のまだら模様にびっくりして、先生に言おうとしたら、もっと怒られるからと止められたんだ。  僕は今のところパパやママに叩かれるほどの失敗をしたことがない。  だから、何をやったらそんなに怒られるのだろうと思ったけれど、遊んだものを元の置き場に戻さなかったからだと、その友達は言った。  躾が厳しい家なんだと思ったけれど、でも、ちょっとひど過すぎるし、お友達がかわいそうだから、今度先生にこっそり言ってみようかと思う。  お友達に比べたら、僕たちはとっても幸せだと思う。今もパパは美月を膝に抱き上げて、僕の描いた絵を、美月と一緒ににこにこと笑いながら見ている。僕はこの家族が大好きだ。 「ほう、陽太は絵の才能もあるんだな。先が楽しみだ」 「にいには、何でもできるの。美月が言うこと何でも聞いてくれるの」 「そうか。陽太はいいお兄ちゃんだもんな。でも、美月、パパのことも好きだと言ってくれよ」
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