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少しひげの生えかけた頬をこすりあわされて、美月がくすぐったそうに首を竦めている姿が、なんとも言えずかわいいなと見ていたら、ママがいつもの幸せタイムの終焉の言葉を告げた。
終焉って、何もかもが終わっちゃうのカッコいい言い方だって、お友達のお兄ちゃんが教えてくれたから、僕も気に入って使ってる。
ママの終焉の言葉で楽しい時間が無くなっちゃうんだからぴったりなんだ。
「子供はもう寝る時間よ。遊んだものを元に戻して、お部屋に行きなさい」
こんな幸せな時間には、ちょっと逆らってみたくなる。
僕のパパとママは優しいから、クレヨンを片付けなかったからと言って、よっぽどの悪さをしない限りは、お友達にしたように手や足はあげないと思うけれど、僕は美月が大好きな良いお兄ちゃんでいたいから、はいと返事をして、美月と一緒にクレヨンを箱の中に戻してからサイドボードの引き出しに入れ、リビングを後にした。
子供部屋は、僕と美月が大きくなったら、真ん中で仕切るらしく、今は大きな部屋に2段ベッドが置いてある。
完全に閉まりきっていなかったカーテンの隙間から、月の誘いが忍び込んでいるように、部屋がぼうっと発光していた。
「にいに、お部屋がいつもより明るいね」
「今日は満月だからね。まん丸のお月さまが、電気みたいに照らしているんだよ」
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