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「にいに、お月さまが大きくなってる」
「うん、見ている間にも少しずつ大きくなってるような気がするね」
リビングでも、両親が騒ぎ出し、子供部屋にママが飛び込んできた。
「起きなさい。二人とも逃げるわよ」
いきなり点けられた電気がまぶしくて、陽太も美月も、目の痛みにまぶたをぎゅっと閉じたが、ママはチェストから取り出した二人の着替えを掴むようにして、大きなバッグにぎゅうぎゅうに詰め込んでいく。
ママの強張った顔が、陽太の不安を呼び起こし、まるでそれを煽るように辺りにサイレンの音がこだまして、強い風が吹き始めた。
「二人とも早く着替えて、このまま月が近づけば、津波が来るんだって。早く用意して」
津波が何だか分からないけれど、訊ねる間もなく、ママは子供部屋を飛び出して、今度は自分の部屋へ荷物を詰めに行った。
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