妄想?

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妄想?

私『お早う・・今朝はお疲れさんでした・・二人とも少しは眠れたか?・・』 どうやら、藤原君は彼女の部屋に泊ったようである。私の言葉にお互いが顔を見合わせていたのが、何よりの証だ。 佐藤「すみません・・今朝のHTML言語の翻訳の件・・お昼過ぎには提出しますので、もう少し待ってください・・」  その日の午後、その結果がレポート用紙に印刷されてきた。 この記事を読めば、満月の月明りが、私達に何を伝えたかったのかが、明らかになるはずだ。なんだかワクワクして来る。  しかし、その内容は、私の期待を裏切るものだった。 私が、二人にお願いした、実験内容が、◇月の位置とその照度と・・◇何種類かのレンズを通過する、その前後の温度だった。 しかしそのデーターは、私達が学んだであろう、インターネットに掲載されている論文そのままのコピーだった。  宇宙の星からの神秘的なメッセージを期待していたのに・・ これでは、私達の実験内容が満月に筒抜けだったことだけ、実証されたようなものだ。 「満月って、もう少しシャイな奴かと思ってたが、結構・・横着な奴だった」 最後のページの佐藤さんのレポートには、謎めいたイラストが添付されていた。 それは・・救命用の「浮袋」・「ブイ(浮標)」・「筏(いかだ)」・「浮き玉」などである。 私『佐藤さん・・このイラストの根源は何ですか・・今朝のHTML言語に、このような海洋浮き物の名称が表記されていたんですか?』 藤原「村田先輩・・それは私が描いたんです・・」 佐藤「私が自宅で、HTLM言語をソースページに落としている間、私の本棚から(海洋の浮遊物)の本を取り出して、読み始めたんです」 藤原「この本って、みんな海に浮かんでる物ばっかりやな・・(浮き玉)て何やろ?・・いったいどんな形してんねやろか?・・そこで私がネットで調べて、傍に有ったレポート用紙に落書きしてしまったんです・・すみません」  その時、私は以前ネットで見た、浮き球を思い出した。勿論その目的を知りたかったので、印象には残っていた。 私『これやで・・これをやな・・干潮の間に、海底に金具で固定しとくやろ・・』 藤原「海の底に止めといても、潮が満ちて着たら浮いてしまいますよ・・」 私『そやから・・満潮になってからやな、その固定金具を何かで解除するんや・・そしたらどないなると思う・・』 佐藤「浮力が働いて、まるでイルカショウのように飛び上がってきますよね・・」 藤原「そうか、それやったんか・・浮力と言うか、そのエネルギーは一気に解き放つと、結構な物でも飛ばせますよね!」 佐藤「それって・・発電に使えません?・・」 私「使える・・使えるとも・・藤原君、佐藤さん・・やりましたね」  めでたく、月の引力つまり、潮の満ち引きを応用した発電装置はその後、何度も実験が繰り返され、私達がテーマとした「浮き玉の理論」が、採用されることになったのである。その装置の名も、そのまま Moonlight Energy と命名されたと・・  これで「めでたし、めでたし」?・・なんの、それどころか、私し個人にとっては、まるで天地がひっくり返るような、告白が待ち受けていたのである。    それは当時のプロジェクトメンバーからの話である。 実験初日の塔屋に映し出されたあのHTLMの言語や符号は、月から送られたものではなかったと言い始めたのだ。    当日の藤原君のテーブルには10枚のレンズのほか、携帯とノートパソコンが起動していた。 実は、藤原君、実験の傍ら、そのパソコンでアダルトサイトを開いていたようだ・・それがレンズに反射され「・・しかも動いている・・」と私が叫んだのである。  慌てた藤原君は、「終了操作」をしたつもりが、アダルト画面をソース画面に切り替えてしまったのだ・・でも彼、本人はそれに気づいていない。 それから後だった・・私が塔屋に投影された何かを観たのは・・  事情を知らない佐藤さんは、私の指示のまま彼女の携帯にその符号を記録し続けたのだ。 しかし、その彼女もいずれ事実を知ることになった。  その日の早朝、彼女の部屋に居る藤原君が打ち明けたのだ。 彼女は、藤原君に同じサイトにアクセスさせ、そのソース画面と彼女が記録した携帯の言語が一致するのを確認した。  二人は悩んだ末、答えを出したのが、ホームページで公開されている論文をコピーすることだった。  「海に浮かんでいる物」をイラストしたのは、藤原君であり、これこそ、佐藤さんの本「棚からぼた餅」である。 でも、このぼた餅が MoonlightEnergy を生んだと言っても誰も信じないかも知れない。  私は、実験翌日の彼らには「月のことなら何でも訊いて」って・・屋上での実験結果が全て私の想定内だったように・・月と私はまるで、お友達かの如く自慢をしていた。しかしこの告白のお陰で、とても間抜けな自分とともに、満月とは特別な因果は無かった自分を見つけることが出来た。  これらは、彼らが私を騙した責任を取りたいと、チーム退室届を持参してきたことで、分かったことだ。  勿論、彼らは有能なスタッフには変わりない、そのことを伝え、今も頑張ってもらっている。  だが、この10年、私は或る時は月に占有されたと怖がったり、またある時は月に助けてもらったり、そしてある時は何もしない月にほんろうされたりした。  いま、振り返れば、自宅のトイレでの出来事が全て私の妄想だったとすることで、屋上の満月はハッカーではないことが、チームメイトの二人によって十分証明してくれた。 これで、私も安心して満月が楽しめると言うもんだ。 ―完― ■本、ストーリーはフィクションであり、登場人物など名称は架空のものといたします。
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