あの人との出会い

6/9
前へ
/82ページ
次へ
俺は食べる側だから出されればなんでも食べるけど、作る側にとって“なんでもいい”は一番難しいのだろう。 昨日の晩は鶏の唐揚げで、その前はハッシュドビーフだった。 肉料理が続いたので今日は魚にしてもらおうかと考える。 「……じゃあ和食で。魚料理が食べたいです」 俺が答えると、宮本さんは大きくうなずいて満面の笑みを浮かべた。 「わかりました!私、こう見えて和食は得意なんですよ!」 “こう見えて”とは、若い女性は洋食が得意と思われがちだけど、ということだろうか。 家政婦なら和食でも洋食でも、家庭料理は一通りできて当たり前なのでは? そう思いながらも深くは追及せず、「楽しみにしてます」とだけ答えた。 俺が食事をしている間、宮本さんは使った調理器具を洗ったり米を研いだりしながら、キッチンから俺に話しかけた。 それは家政婦が聞きそうな好きな食べ物とかではなく、学校や部活のことだった。 「何か部活はやってるんですか?」 「もう引退しましたけど、バレー部でキャプテンやってました」 「キャプテンですか!間違いなくモテるでしょう?彼女はいるんですか?」
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3053人が本棚に入れています
本棚に追加