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現在は、リビングにあるガラスケースの中で、私は飾ってもらっています。庭に居た時よりも、毎日、ご家族皆さんの様子を深く観察でき、事故の予防がしやすくなりました。
私のことを”エッチな象”と話していた女の子も態度が一変しました。遊びに来れば、尊敬するようなまなざしで、なんの変哲もないはずの、私を見上げてくれます。
お茶目なこの子にも、事故が起きないようにお祈りをしています。
お父さんも、私をとても大事と考えながら、息がかからないようにマスクをして、白い手袋をはめ数日に一回は、丁重に布で拭いてくれます。
娘さんがお父さんの背後から、声をかけました。
「テレビ局の運送屋さんが取りにきた日、中秋の名月だったよね」
人間にとって食べ物がないのは、大変なことの一つです。私は農耕の豊作を願う、秋のヴィーナスとして生命を吹き込まれました。
秋は実りの季節です。世界各地で、秋にまつわる伝承には、満月が関係していることも多々あります。
多くの時代、多くの地域でご家庭を巡ったので、多少は存じております。
窓辺で花瓶に飾れたポトスさんは、外にでる機会に恵まれません。私が過去に世界中で見てきた光景を離せば、緑色の葉を嬉しそうに動かします。
しかし、ポトスさんに、隠していることもあります。昔、お世話になったある、ご家庭でのことです。私は個人の力でどうしようもない、凄惨な光景を目の当たりにしたのです。
私たち、人間を見守る飾り物や、観葉植物が願いは、ただ一つ。人間が幸せに暮らすことです。
少なくとも、このご家庭やご近所さまは、衣食住にらず、平和な地域でお暮らしのようです。
もう、過去のお父さんの行為は、水に流しました。ポトスさんが最近の話し相手です。
今日も満月です。リビングの分厚いカーテンが開かれ、ご家族三人で満月を見上げています。柔らかな秋の風が、ポトスさんを撫でています。
羨ましいな。私は密閉されたガラスケースから、外に出られないのです。
「お月見団うどん、一つ飾って上げる」
娘さんが、ガラスケースに、球形の食べ物を手で差してくれます。ここでは、食べ物をお供えする習慣があるようです。ありがとう。お父さんとお母さんは、像が汚れたら大変とか、騒がしいですが、微笑ましいかな。
こんなご家庭の一員のような扱いは、初めで照れます。とても幸せです。(完)
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