この世界では、月に食べ物をお供えします。

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 全身を新品の布で覆われて視界が真っ暗になります。能力を使いきり、深い眠りについてしまいました。  目が覚めました。物置から運び出された私は、久々の新鮮な空気に触れながら、眩いばかりの多くの灯りに照らされていました。ご家族三人がいます。居住まいを正して、強張った笑顔です。存じ上げないどなたか、と楽しげに話しているので、安心しました。 「本番です。スタート! 拍手!」    万雷の拍手が響きます。数百人の居並ぶ人々が、私を見入っています。これだけ大勢の人をお守りするのは、私に与えられた能力の限界を超えており、怯えてしまいました。  初老の紳士たちが、私の肌をルーペでまじまじと見ています。とても丁重に、持ち上げて足の裏まで確認します  遠巻きに見ている男性がいました。昔のヨーロッパのお金持ちみたいな、やけに派手な色の服でおしゃれしています。短い園芸用のスコップみたなのを手に持ち、ご自身の口元に近づけます。男性が人々に大声を張り上げました。 「鑑定の結果は、三千万円ですっ!」  皆さんのどよめきが起こりました。同時にあまたの人々の多種多様な感情が、体の中に流れ込んでしまって、それぞれの方の、お心まで分かりません。負より、正の感情が勝っています 「――秋のスペシャル、終わります」  男性の声を後にしながら、台車に乗せられた私は別の部屋に移動です。お父さんが震える手で、私を木箱に入れようとした時、きっと睨んでやりました。  帰宅する途中は、車輪がついた乗り物です。事故が起きないよう、巻き込まれないよう、お祈りをしていました。
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