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「春海・・・それは本当に?」
そう訊ねてきた秋人くんの声はそよ風のように静かだったけれど、俺の心の内を木の葉のようにザワザワと揺らした。
「・・・うん。本当に・・・」
俺はそう答えて走行する車の窓の外に視線をそらし、その問いがなかったことになるのを待っていた。
「・・・嘘。何か考えてた。まさか・・・今朝のこと?」
秋人くんのその問いに俺は黙っていた。
「・・・それとも・・・ウチを出て行こう・・・とか?」
「っ!?」
秋人くんに思っていたことを両方とも言い当てられた俺は目を丸くしていた。
そんな俺を見た秋人くんは『当たった』と言って嬉しそうに笑んでいた。
なのに・・・。
「・・・ウチを出て行くことは・・・許さない・・・」
そう言った秋人くんのその声は驚くほど威圧的だった。
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