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 丸山の手を握り、空いている方の手でバスに手を振った。丸山がムデバを操作し、ふっと体が軽くなったと思ったら俺は家の中にいた。気が付くと俺は壁に向かって手を振っていた。 「あれ、もう移動したの?」 「瞬間移動だからね」  部屋には色んな機械が置かれていた。壁一面にモニターやらスイッチやらが設置されていた。これがノーヘル賞を受賞した科学者の研究室なのかとちょっと感動した。でも俺はこの部屋を無くすために過去へ帰るんだ。 「長太郎くん、これ」  丸山はさもない丸くて黒いゴム製のペラペラした物を床に置いた。 「何だこれ?」 「ラビットホール」 「これが?」  確かに地面に置けば穴に見えなくもない。しかしこれが人類の夢見たタイムマシンなのか。 「映画に出てくるような人間まるごと入るような装置なんて必要ないよ。この大きさで十分機能する。エコだろ?」  エコはいいが安全性は大丈夫なのか。空気とか気圧とか重力とか……。いや俺が考えても意味がない。天才丸山にかなうわけがない。第一1回これで俺もタイムトラベルしたわけだし。 「でも違う時代へ間違って行っちゃうとか、知らない場所に着陸しちゃうとかは無いよね?」 「大丈夫だよ。みんな計算して設定してあるから」  丸山はパソコンを操作し始めた。 「じゃ、長太郎くん、取り敢えずサヨナラだ。」
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