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隣国ドルトランドの王子にして人質のレオポルドからの手紙
愛するルシフェルダ王女! ぼくの真実の恋人!
こんな軽々しい書き出しの手紙を送るなんて、きっとびっくりするだろうね?
でも、そう書かずにはいられないんだ。
だって、インゴッド四世が亡くなったんだから!
あ、きみにとって父王であるインゴッド四世の死を、こんな風に知らせちゃいけなかったね。
本当にぼくはうかつだった。自分でもイヤになるな。
だけど、ぼくの立場に立って考えてくれよ。
きみのフィアンセというのは名ばかりで、実際にはただの人質だもんな。
だけどこれできみは塔から出られる。晴れて女王として即位するんだよね。
そしてぼくと結婚する!
ねえ、ぼくとの結婚は契約通りだよね? 反故にしたりしないよね? 国と国との契約なんだもの、反故にしたりはできないんだよね?
ドルトランドは貧しい国さ。きみの王国に従属して、なんとか国として体裁をたもっているだけの。
それでもドルトランド国がきみの王国にとって大事なのは、辺境のザルハード族が手ごわいためだよね。で、ザルハード族と言えば、アレクソード将軍。
王宮の中庭で、アレクソード将軍ときみが手を取り合っていた……なんてぼくがインゴッド四世に告げ口したと思っているの?
国中の正義派の若者たちに支持されているアレクソード将軍と王位継承者のルシフェルダ王女の恋……なんてくだらないゴシップ、ぼくは信じていないよ。
でも信じようが信じまいが、インゴッド四世にとっては重要じゃなかった。
アレクソード将軍を辺境の前線基地へ追い出し、きみを魔女の塔に幽閉するいい口実になったってわけだ。
でも、インゴッド四世はお亡くなりになった!
使われたのは毒針だ!
殺したんだ。実は、ぼくがね。王さまを。
これでぼくときみは結婚できるというものだろう?
こんなことを手紙に書くなんて、軽薄すぎるとさげすまないでくれよ。
きみにとってぼくが大切な伴侶だということを、ちゃんと分かってほしいから書くんだからね。
近い将来のぼくの妻、可憐なルシフェルダへ、レオポルドより愛をこめて。
追伸、心からの口づけを!
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