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それは僕の思い上がりでも何でもない。
人が人を愛する気持ちは伝わるものだと・・
彼女が身を持って教えてくれたような気がした。
彼女は、
僕が何気なく言った言葉や、僕のなんでもない仕草に対して、
「どうして、あなたはそんなに優しいの?」と、訊いた。
そう言った時の彼女の顔はなぜか、僕には泣いているように見えた。
だが、僕にはそんな彼女の言葉が、全く理解できなかった。
僕は自分のことを優しいとも何とも思わなかった。
そんなK子との関係が長く続くはずもない。
短期間で別れることになった。
別れた原因の100%は僕の方にある。
その頃の僕には、
彼女の包み込むような優しさが、ただただ鬱陶しかったのだ。
僕のそんな心は、先を急ごうとする若さゆえのものだった。
僕の周囲には、未来には、
K子以外の素敵な女性、僕に相応しい人が待っている。
そんな風に、
子供のように期待しながら、僕は未来の扉を開けようとしていた。
だが、
未来というものは、自分の思い通りには開けていかないものらしい。
特に、僕のように誰かを傷つけて進もうとする者には、
未来は冷淡だ。
そんな冷遇された未来の人生にはロクなことはなかった。
不慮の出来事、
大きな災害に、人災・・僕自身や、僕の周囲に不幸は続いた。
そんな中、
とっくに別れたと思っていたK子とは、
それっきり、一度も会うことがないはずのK子とは・・
・・終わっていなかった。
僕たちは、別れても、K子の方は終わっていなかったのだ。
僕の心はK子とは離れていても、
僕は、K子の中で生きていた。
その証拠を示すように、別れてからも、
僕の人生の過程で・・その節目節目に手紙や葉書が僕に届いた。
手紙はK子からだ。
何度も何度もK子から手紙が来た。
年が明けると、年をとったことを知らせるように葉書が来る。
共通の知り合いに何かがあると、その度に、知らせてくる。
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