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「奏人兄さん」
コウダイがそっと歩み寄った。
「初代大統領のファーストレディーなんだ。もう少ししっかりしないと。泣いている場合じゃないだろう」
「そんなこと言われても」
泣きじゃくるコウダイの頭をぽんぽんと撫でると、奏人はコウダイをそっと抱き締めた。
「相変わらずきみは泣き虫だね。お兄ちゃんがいなくてもサウルがいるんだ。寂しくないよ」
子どもの頃からお兄ちゃんっ子だったコウダイ。一番大好きなのはもちろん奏人だ。
お互いのパートナーに焼きもちを妬かれながらも、いまもそれは変わらない。
奏人の胸にすがりひとしきり泣いたのち、コウダイは涙を拭いながら兄の旅立ちを笑顔で見送った。
「泣くのはベットのなかだけにしてくれ。昨夜のきみはいつになく大胆で素敵だったな。今晩も泣かせたくなるだろう?」
「ちょっとサウル‼」
回りにSPがいるのになにも大きな声で言わなくてもいいのに。
恥ずかしくて身の置き場に困っていると、
「コウダイは可愛いな」
愉しげに笑いながらサウルがコウダイの手をそっと握り締めた。
「ガーランドの新しい歴史がはじまる。コウダイ、これからも俺を支えてくれ」
力強く伝えると「サウル大統領ばんざい」「民主政権ばんざい」大勢の民衆が待つ広場へとゆっくりとした足取りで向かった。
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