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「サウル様のご慈悲だ、有り難く思え」
壊れた窓から入り込む冷たい隙間風に思わず身震いするコウダイ。
子供たちと遊んでいる時だけという条件付きではあったものの足枷を外して貰えた。
ランタンの仄かなオレンジ色の明かりが今にも崩れ落ちそうな廃墟を静かに照らしていた。
「ねぇつぎは?」
「あたし、もういっかいききたい‼」
これが初対面だとは思えないくらい、コウダイとユキヤはすぐ子供たちと打ち解けた。
子供たちも警戒心を抱くことなく二人に懐き、眠り眼を擦りながら、あくびをしながら日付が変わる直前まで片時も離れようとしなかった。
「今更恥ずかしがっても仕方ないだろう」
石で出来た寝台は体が凍り付くくらい冷たくて。凍えるコウダイの華奢な体をユキヤがそっと抱き寄せた。
「少しは温かい?」
「うん、ユキヤは?」
「俺はこういうの慣れているから」
保護される推定十三才歳まで路上で寝起きしていたユキヤ。
過酷な状況下でも取り乱すことなく冷静そのものだった。
「父さん達や母さん・・・・心配してるよね・・・・・」
ユキヤの服にしがみついていたコウダイが寂しそうにポツリと呟いた。
「国内情勢が悪化する一方なんだ。いつ何があるか分からないんだ。マザーたちだって覚悟は決めているはずだ。ラーズヒヤは王族として恥じない生き方をすればいい。俺が全力で守るから」
「ありがとう・・・・・」
ユキヤの言葉に励まされ、ようやく安心したのか、逞しい胸に顔を埋めながらコウダイは静かに眠りに落ちていった。
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