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「しかし、不思議な子だ」
子供達の賑やかな声に強張っていたサウルの目元が柔らかく緩んだ。
「え⁉何か言った?」
隣にいた青年が思わず聞き返した。
年はコウダイとさほど変わらない。
栗色の髪に、意思の強そうな紺碧の瞳。一見すると女の子かと思うくらい可愛らしい顔立ちをしていた。
みな覆面姿なのに、彼だけは顔を表に出していた。
「独り言だ」
「えぇ‼何それ」
ぶすっと膨れっ面する青年に、側に控えていたコロハーロが笑いながら声を掛けた。
「サウル様は、捕虜に捕らえたラーズヒヤが気になって仕方ないんですよ」
「ラーズヒヤ?」
青年が怪訝そうに眉を寄せた。
「だからそんなんじゃない」
サウルが急に慌て出した。
「コロハーロ、そのラーズヒヤって女、今すぐここに連れてきて」
「ルベーノ様、ラーズヒヤは男ですよ」
コロハーロがゲラゲラと声を上げ笑い出した。
「笑わないで!」
頬っぺたをこれでもかと膨らませるルベーノ。
「ラーズヒヤはマザーミオの息子だ。俺たちの仲間にはハナサクラ出身の者も少なからずいる。くれぐれも失礼な真似はするな、いいな」
その上サウルに念を押されますます不機嫌になっていった。
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