虜囚

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「サウル様!」 爆風で吹き飛ばされ横倒しになった軍用の大型トラックの辺りを捜索していたコロハーロが何かに気が付き大声で叫んだ。駆け寄ったサウルが目の当たりにしたのは、頭から血を流しながらもラーズヒヤと子供達を必死に守るユキヤと、 「もう大丈夫だよ」 すっかり怯えて啜り泣く子供達を懸命にあやすラーズヒヤの姿だった。 「良かった無事で」 「はぁ?無事な訳ないだろ。俺が気付いていなかったらみんな死んでいた。スターロのような悲劇をまた引き起こす気か?」 ホッと胸を撫で下ろしたサウルに、鬼の形相でユキヤが噛み付いた。 「スターロ・・・って、もしかして君は」 「貧民街は俺の産まれ故郷だ。ガーランド空軍は情け無用とばかりに空から爆弾を投下し何の罪もない市民をたった一晩で皆殺しにした。革命を企てたなんて濡れ衣なのに・・・」 「もういいから」 コウダイが宥めるようにユキヤの肩をそっと抱き締めた。 「爆弾を子供に向けて投下するなど正気の沙汰じゃない。空軍は国民を守るべき存在じゃないのか」 ユキヤが炎で赤く染まる空を睨み付けた。 「シェルターまでどのくらい?」 「全力疾走で3分くらいだ」 「じゃあ一人に子供が三人。リーダーのあなたには五人。数分後には二発目が投下されるはずだ」 サウルが舌を巻くくらいユキヤは冷静だった。コウダイもみなとおなじように、ルチルをおんぶし、女の子を脇に抱えた。もう一人の大きい男の子にはしっかり服を掴んでいるように言うとシェルターめがけて一斉に駆け出した。
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