スターロの悲劇

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スターロの悲劇

「ここは宮殿の跡地だ。28年前台風が立て続けに直撃し、未曾有の大災害に見舞われた。それにも関わらず先代王は陣頭指揮を臣下に丸投げにし、お気に入りの愛人らとここでバカンスに興じた。それに怒り狂った民衆が暴徒化しここに大挙して押し掛け、先王に退位を迫り、火を放った。産まれる前ことなど知らぬよな」 「権力に決して溺れるな、民があってこそ国が成り立つ。いつも父から聞かされていました」 「そうか」 薄暗くて迷路のように入り組んだ地下通路をサウルらの後について歩いていると、「こっちだよ」子供達がコウダイの手をグイグイと引っ張り、サウルらを追い抜かし、ランタンの明かりが煌々と灯る広い場所に案内してくれた。 そこではさっきの攻撃で負傷した大勢の兵が次から次に担架で運び込まれ治療を受けていた。 治療をしているのは医師ではなく全身黒ずくめの女性たちだった。 『どうやら攻撃は止んだようだ。偵察機が上空を旋回し被害を確認したのち飛び去っていった』 「そうか」 砂漠の向こうに広がる山岳地帯で空軍の動きを監視していた別のレジスタンスから無線が入った。 『こちらも空軍に攻撃を受け被害は甚大だ。サウル、気を付けろよ』 「あぁ、分かった」 無線を切るなりコウダイに自然と目がいった。 「大丈夫、ですか?」 「こんなの掠り傷だ。俺はあとでいいから」ユキヤにそう言われたコウダイは、子供達と一緒に女性たちの手伝いをはじめた。 その光景を眺めているうちサウルはふとあることを思い出した。
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