スターロの悲劇

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またキスされる……… コウダイは思わず目を閉じた。 「いちゃつくなら他所でやれ!」 寝袋を投げつけられ、コローロの怒声が上がった。 「兵どもの士気が下がる。さっさと失せろ!」 「あの………」 ユキヤが何かを言い掛けたもののぐっと堪え我慢した。 「行こう」 寝袋を脇に抱え立ち上がると、コウダイの手首を掴み、そのまま引っ張って歩き出した。 「ユキヤどこに行くの?」 「アイツらがいないところ」 このアジトからどうにかして脱出しなければ。その一心で薄暗い地下道を前に進んだ。 「ユキヤ待って…………」 足元を照らしてくれる明かりさえなく。 全然見えなくて。 普段なら決して躓くはずのない石に躓いて、バランスを崩し派手に転んでしまった。 「大丈夫か?」 「うん」心配を掛けまいと笑顔で答えたものの、擦りむいた膝はジンジンと痛み血が滲み出ていた。 「これじゃあ歩くのも無理か……今晩はここで寝よう。俺はいいから寝袋はラーズヒヤが使え」 「ユキヤは?」 「あのな………」 コウダイも母親に似て恋愛に疎く、天然なところがある。そこがまた可愛いのだが。 岩影に寝袋を広げて初めて2人用だと気がついたユキヤ。そのことをコウダイには言わず背中を向け冷たい石の上に座り込んだ。 でも我慢しきれずにコウダイが寝入るを待って寝袋にごそごそと潜り込んだ。 好きで好きで、世界中の誰よりも大好きで。 一人前になり自活出来るようになったら、コウダイにプロポーズするつもりでいた。 鼻を背中に擦り付けると、お日さまの匂いと微かな石鹸の匂いがした。 ラーズヒヤ愛してる………耳元に何度も囁いて、ぎゅと抱き締めた。
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