ガーランドの赤い月

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「本当に初心だな、ラーズヒヤは」 「五月蝿いな」 からかわれてコウダイは頬っぺたをこれでもかと膨らませて不貞腐れた。 ユキヤの言う通りまだ一度も人を好きになったことがないコウダイ。 恋愛には憧れるものの、はじめの一歩をなかなか踏み出せないでいた。 臆病といえばそれまでだが。 教室に着くとすでに講義が始まっていた。 そぉーと忍び足で中に入り、ユキヤと一番後ろの席に静かに着席した。 それから数分後ーー カーキ色の戦闘服に身を包んだ男たちがライフル銃や自動小銃を手にしながら、無言で教室に雪崩れ込んできた。 一見するとガーランド国軍の兵士に見えるものの、明らかに違う点が一つ。 男たちはみな左の肩に赤い布を巻き付け、顔を隠すように口元を黒い布で覆っていた。 「ルビー・ムーン(ガーランドの赤い月だ)!」 学生の一人がすぐにそのことに気が付き大声で叫ぶと学生たちは一斉にパニックに陥った。 現政権に真っ向から反発し、テロも殺人も厭わない冷酷なレジスタンス集団ーーそれがルビー・ムーンだった。 自爆ベルトと呼ばれる自爆用の爆弾を体に巻き付けた大男が黙れ!と唸り声を上げ、天井に向かい拳銃を一発発射した。
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