虜囚

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「お名前は?」 「その子はルチル」恥ずかしいのかモジモジして、なかなか答えない男の子に代わりに女の子が答えた。 「育ち盛りだからね、すぐお腹空いちゃうよね」 そういえばポケットに施設の子たちから、遊んでくれたお駄賃にってキャンディーを貰っていたんだっけ。 それを思い出しポケットに手を突っ込んだ。 「ポケットの中に何があるかな………」 ハナサクラの子供たちと遊んでいるように子供たちと手遊びを始めた。 「おにいちゃんすごい!」 黄色い歓声を上げ目をキラキラと輝かせる子供たち。 キャンディーちょうど人数分あって良かった……と安心したのも束の間、あちらこちらから子供が姿を現しコウダイの回りに集まってきた。どうしよう………悩んだ末、ルチルを膝の上に抱っこして、毎日寝るときに子供たちに聞かせている両親の故郷、日本という国で長く語り継がれている昔話というものを子供たちに聞かせてあげることにした。 「こら!余計なことするな!」 なんの騒ぎだ騒々しい、ぶつぶつと文句を言いながら様子を見に来たのは、大学を襲撃し皆殺しを部下に命じた男ーーコローロだった。イライラしながら声を荒げた。 「コローロそう目くじらを立てるな」 「でもサウル様」 「子供たちが、あんなに楽しそうにしているんだ。構わないでおけ」 渋るコローロにやれやれとため息をつきながら、側にいた腹心のコルハーロに、コウダイたちと子供たちを別の部屋に連れていくように命じた。
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