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悠生は今月(12月)の初旬に6歳の誕生日を迎えたので彼の少し遅い誕生日祝いに、聖夜はこうして仕事の年末年始の休みを使って悠生を旅行に連れて行っていた。
聖夜と悠生は湖の周りから観光客が減っていっても、雪うさぎが現れるのを待ち続けていた。その間にも、白く水分の多い雪は降り続いていき、二人の被っている帽子にはすでに雪が積もっていた。
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それからさらに数十分経っても、雪うさぎは現れなかった。
「うさぎさん、来ないな……。もうだいぶ人減っちゃったし、宿の人も心配すると思うから帰ろっか、な? 悠生。」
諦めたように聖夜がそう言った瞬間、悠生が涙ぐんだ瞳で聖夜を見つめれば口を開いた。
「そんなのイヤだ! パパさっき言ってたじゃん! 信じていればうさぎさん来てくれるって! だから…帰るのはイヤだよ!」
そして、大声で泣きだした。
「…悠生。」
聖夜はただ哀しげな表情で、我が息子の泣いている姿を見つめるだけだった。
そうしているうちに、次々とその場にいる観光客の人数は減っていく。
だが、湖の付近にいる観光客たちの人数が指を指して数えきれるくらいになった頃、奇跡は起きた。
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