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「おい! 見ろよあれ!」
「あ、うさぎ!」
そう、凍りついた湖のほとりに真っ白な数匹の雪うさぎが姿を現したのだった。
指を指した観光客の者たちは、急いで懐や鞄などからカメラやケータイを取り出し、写真を撮り始める。中には既に願い事を雪うさぎに唱えている者もいた。
当の雪うさぎはと言うと、数匹で列を作って湖のほとりを駆けている。
満月の月明かりが暗い師走の雪の夜の世界を優しく照らし、雪うさぎの白い毛がそれに美しく映えている。
「やった! うさぎさん来てくれた!」
「良かったな! 悠生。じゃあお願い事、しよっか。」
「うん!」
先程まで泣いていた悠生は、雪うさぎが現れたことで元気を取り戻し、笑顔になっていた。そんな我が息子の姿に聖夜も自然と笑顔になる。
2人は瞳を閉じ、口元に両手を合わせて雪うさぎに願いを込めて祈ったのだった。
悠生の願いは以下のような内容だった。
“しょうらい、りっぱな人になれますように。”
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