イマワノキョウシロウ~あの子からの手紙~

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イマワノキョウシロウ~あの子からの手紙~

 どうやら、僕の人生も、ここまでのようだ。  段々、意識が遠くなって来た。    所謂(いわゆる)、『臨終(りんじゅう)』ってやつを、そろそろ迎えるようだ。  何だか、頭の中で、ザーーーーーーッと、これまでの人生のいろんな場面が、これまた、所謂(いわゆる)走馬灯(そうまとう)のように(よみがえ)る。  もちろん、いいこともあったけれど、人生って、なかなか思うようにはいかないもんなんだなぁ~と、痛感させられたなぁ~……。  学生時代は、好きになった女の子たちに、よくラブレターも書いて、よくフラれたな~。  そう言えば、のんびりした性格の女の子にも、ラブレター、書いたことあったな~。  で、ほんとに彼女、のん~~~びりした女の子だったから、「返事は、ちょっと待ってね~~~……」、な~んて言ったまま、僕たち、そのまま卒業しちゃったんだよな~。  今となっちゃ~、懐かしい思い出だけど、 『返事遅くなってゴメ~ン!』  ……な~んて、何十年も経った今、ひょっこり手紙でも届いたら、大笑いだな~。  ……と思っていたら、 「親父~ッ! まだ、死ぬな~ッ! どなたからか、何か手紙届いてるぞ~ッ! 何か、親父への返事みたいだZ《ゼ》ーーーッッッ!!!」  ……って、ほんとに彼女から届いたのだ!   のんびり屋さんの女の子だったけれど、一体、どんだけのんびりしてんだよ~ッ! こっちは、もう、(いまわ)(きわ)だっちゅうのッ! 「息子よ、早く読んでくれ~……。こっちゃあ~、意識が遠くなってんだ~……。冥土(めいど)土産(みやげ)に、彼女からの返事を……、彼女の気持ちを……、ワシに聞かせてくれ~~~ぃ……」  私は、心の中で、声にならない声を叫んでいた。すると、息子が、 「親父~ッ! 聴こえるか~ッ?! 読むからな~ッ!」  と、大きな声で読み上げてくれた。 ****************************  ラブレターありがとう!  約九十年、あなたへの気持ち、ゆっくり、自問自答していました。  やっぱり、キライでちた!  なので、お付き合いできましぇ~んッ!  私が付き合いたいのは、同じクラスの~、……って、教えな~い★♪  グフフッ♪  ほな~、さいなら~!    バイッす~♪  テヘペロ、テヘペロ~★♪ ****************************  知らぬが仏とは、このことだ!  今、まさに、死ぬ間際。こちとら、(いまわ)(きわ)なのだ。 「今さら、いちいち知らせてなんてくれなけりゃ~、学生時代の甘酸っぱい思い出のまま終われたのにな~……」  そんな思いが、沸々(ふつふつ)()き上がる。  と、同時に、あの子は、何てキャピキャピのポップな婆さんになってんだ?!   『私が付き合いたいのは、同じクラスの~』、  ……って、今さら、誰だっていいんだけど、まず、ご健在なのか?  人生には、わざわざ知らなくてもいいことがある。  約九十年も前の学生時代に出したラブレター。  その返事を、彼女の気持ちを、まさか、(いまわ)今日(きょう)()ろうとは……。  私は、ガックリ来て、ポックリ!  ()っちゃったので、 「()って来ま~す♪ 皆さん、ご機嫌よ~、さようなら~ッ♪ ハァ~、極楽極楽♪ 往生(おうじょう)しまっせ~ッ!」
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