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イマワノキョウシロウ~あの子からの手紙~
どうやら、僕の人生も、ここまでのようだ。
段々、意識が遠くなって来た。
所謂、『臨終』ってやつを、そろそろ迎えるようだ。
何だか、頭の中で、ザーーーーーーッと、これまでの人生のいろんな場面が、これまた、所謂、走馬灯のように甦る。
もちろん、いいこともあったけれど、人生って、なかなか思うようにはいかないもんなんだなぁ~と、痛感させられたなぁ~……。
学生時代は、好きになった女の子たちに、よくラブレターも書いて、よくフラれたな~。
そう言えば、のんびりした性格の女の子にも、ラブレター、書いたことあったな~。
で、ほんとに彼女、のん~~~びりした女の子だったから、「返事は、ちょっと待ってね~~~……」、な~んて言ったまま、僕たち、そのまま卒業しちゃったんだよな~。
今となっちゃ~、懐かしい思い出だけど、
『返事遅くなってゴメ~ン!』
……な~んて、何十年も経った今、ひょっこり手紙でも届いたら、大笑いだな~。
……と思っていたら、
「親父~ッ! まだ、死ぬな~ッ! どなたからか、何か手紙届いてるぞ~ッ! 何か、親父への返事みたいだZ《ゼ》ーーーッッッ!!!」
……って、ほんとに彼女から届いたのだ!
のんびり屋さんの女の子だったけれど、一体、どんだけのんびりしてんだよ~ッ! こっちは、もう、忌の際だっちゅうのッ!
「息子よ、早く読んでくれ~……。こっちゃあ~、意識が遠くなってんだ~……。冥土の土産に、彼女からの返事を……、彼女の気持ちを……、ワシに聞かせてくれ~~~ぃ……」
私は、心の中で、声にならない声を叫んでいた。すると、息子が、
「親父~ッ! 聴こえるか~ッ?! 読むからな~ッ!」
と、大きな声で読み上げてくれた。
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ラブレターありがとう!
約九十年、あなたへの気持ち、ゆっくり、自問自答していました。
やっぱり、キライでちた!
なので、お付き合いできましぇ~んッ!
私が付き合いたいのは、同じクラスの~、……って、教えな~い★♪
グフフッ♪
ほな~、さいなら~!
バイッす~♪
テヘペロ、テヘペロ~★♪
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知らぬが仏とは、このことだ!
今、まさに、死ぬ間際。こちとら、忌の際なのだ。
「今さら、いちいち知らせてなんてくれなけりゃ~、学生時代の甘酸っぱい思い出のまま終われたのにな~……」
そんな思いが、沸々と沸き上がる。
と、同時に、あの子は、何てキャピキャピのポップな婆さんになってんだ?!
『私が付き合いたいのは、同じクラスの~』、
……って、今さら、誰だっていいんだけど、まず、ご健在なのか?
人生には、わざわざ知らなくてもいいことがある。
約九十年も前の学生時代に出したラブレター。
その返事を、彼女の気持ちを、まさか、忌の今日知ろうとは……。
私は、ガックリ来て、ポックリ!
逝っちゃったので、
「逝って来ま~す♪ 皆さん、ご機嫌よ~、さようなら~ッ♪ ハァ~、極楽極楽♪ 往生しまっせ~ッ!」
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