刀夜とシロの場合。

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刀夜とシロの場合。

いつもの仕事が終わった時、もうすでに夕方になっていた。 今日もいつものように張り込みをして、そして、刀夜(とうや)がそれをどうにかする。 仕事内容がちょっと他にはない特殊なものなので、それについては、いまは何も触れないでおきたい。 ただひとつ言えることは、この一連の仕事に、今日は未明から今までかかっていた。 と言うことだ。 今日の朝御飯がわりに口にしたものは、私は甘い缶コーヒー。刀夜は甘い缶紅茶だった。もちろんお昼ご飯はまだ食べていない。 さすがにお腹ペコペコだ。 このまま刀夜と仕事帰りの食事デートといきたいところだが、これが何よりも難しい。 刀夜をご飯に誘う場合、とてもとても面倒くさいのだ。 なぜなら、刀夜は肉を食べない。牛も豚も鶏も。だから、フツーなら喜びそうなフレンチのフルコースも食べない。 有名どころのミシヤ亭やキモラ亭のしゃぶしゃぶもフツーの男なら食べそうなところだが、刀夜は食べない。 そして、生魚も食べない。だから有名なボルビルの大きなネタのお寿司も食べない。お寿司はかっぱ巻きと新香巻きオンリーだ。 ラーメンならチャーシュー抜きだ。 そして、とてつもなく甘党だ。 この最強レベルのド偏食はいかんともしがたい。 刀夜の特殊能力より遥かに特殊なのではないかとさえ思ってしまう。 こんな男となぜ一緒にいるかって? 過去にいろいろあって、その都度刀夜は優しかったこと。私は何度も刀夜に命を助けられている。だから、一緒にいるし、これからもずっと一緒にいたい。 ・・シスコンなところも、いかんともしがたいと内心思っているけどね・・ それにしても、刀夜のド偏食をどうにかしなければ、アパートの壁を越えて、この先一緒に住むようなことになって、私が、 「刀夜~朝御飯できたよ~。」 なんて言える日はなかなか来ないのではないかと思うのだ。 だからこそ、どうにかしたいのだけど・・ 鴨川の野鳥や、のら猫をはじめとして、動物が大好きな刀夜に、 「料理されても、動物のパーツにしか見えへん。」 と言われると、もう私にはぐうの音も出ない。 いっそのこと、一緒に住んだら、白ご飯と、お豆腐と、おあげさんと、おからの炊いたんだけの組み合わせでもいいかとさえ思えてくる。 そんなことを空想していた時に、唐突に刀夜が言った。 「シロ、今日は絶対アレを食べる。」 そういった刀夜の眼は、心なしか爛々としていた。
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