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着いたのは、巨大な立体オムライスの看板が目印の、街中にある老舗だ。
刀夜の口元が笑っている。刀夜が食事関係でこんな表情をすることは滅多にない。
「いらっしゃいませ~」
と言った、レストランのかわいい制服を着た女子店員に対して、刀夜は間髪いれずに、
「あの、天使の羽のをよろしくお願いします。」
と言った。
店員さんは、
「あ、アレですか・・」
と、少し戸惑っていた。
それもそうだ。刀夜のような控えめに見ても男前の男性が頼むような代物ではない。
店員さんの放つ凍りつきそうな空気を打開しようと、
「あ、じゃあ、私はシーフードオムライスを。」
と付け加えて私は言った。
「あ、はい。少々お待ちください。」
あぁ、まただ。
この前、有名なコーヒー屋さんで、刀夜が紅茶を頼んだときと同じような目付きだ。店員さんの視線が痛い。私も刀夜と同じのを頼めば、この視線は防げたはずだったと、今更ながらに後悔する。
オーダーして、しばらく待っている間も、刀夜はそわそわして落ち着きがない。終始笑顔だ。刀夜がここのアレが何よりも好きなのは私も知っている。でも、刀夜、私にそんな顔したことないよね?と思わずにはいられない。そう思いながらも、それを言葉に出来ない自分自身が情けない。
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