鷲見組

1/3
前へ
/35ページ
次へ

鷲見組

 今までのわたしの人生。詳しくいえば、産まれてから中学までの人生で、友達が一人もできなかった。  ぼっち。ぼっち飯なんぞまだ良い方で、二人一組なんて先生だったし、学校なのに、同級生なのに、全く話し相手がいない。本当に悲しい時間ばかり過ごした。  それもこれも、全て  ────鷲見組。  これが原因。  鷲見組は、関東のほぼ全域にまで傘下を広げている……いわばヤクザだ。  わたしがその鷲見組の組長──亮之助の三女として産まれたのが、そもそもの元凶。  そう、わたしは鷲見組のお嬢様なのだ。  大きなヤクザの組長の娘……それも、美人三姉妹……うふふ。とても大切にされていると思うだろう。  少女漫画のように、さぞチヤホヤされていると思うだろう!!!  ────否。否!!!!  悲しいことに、わたしはチヤホヤのチの字もない。  長女の美恵子(24)も次女の風子(20)もチヤホヤされているし、上品でお嬢様のようだけれど、わたしは違う。  人見知りだし、美人ではないし、なにより父に可愛がられたことがない。  だから、せめて、ずっと友達が欲しかった! なのに「あの子と遊んじゃ駄目」「ヤクザの子でしょう? 怖いわ」等と、良い印象を周囲の親が受けず、それを子供に強要した結果────わたしには友達ができない。と、思う。  明日からの高校では、友達が出来ますように!  そう祈りを込めに込めて、ベッドへ入る。わたしは変わるのよ。  鷲見組さえバレなければ、友達だって出来るんだから!  いつか好きだった魔法少女の変身呪文を唱えながら眠りについた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加